企業経営において「コスト削減」することは収益性改善の点でも大変重要です。現在、長引く低金利環境により、銀行の利ざや収益が圧迫されています。コストを削減することで支出を減らし利益率をUPさせることが可能です。コスト削減は変化の多い現代の経営環境においては決して避けては通れない施策です。
本コラムでは銀行でできるコスト削減について詳しく解説します。ぜひ参考にし、取り組んでみてください。
コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。
銀行におけるコスト削減の重要性

世界的な低金利、オンラインバンクへの需要の高まり、フィンテック企業の台頭、マネーロンダリング防止規制強化などによるコンプライアンス体制の整備の必要性など銀行を取り巻く経済環境は大きく変化しており、コスト削減は収益性の維持や競争力の強化、持続可能性の追求などに不可欠な取り組みといえます。
その中でも今回は間接材コストの削減について解説します。なぜ、間接材コストを見直すべきなのかは以下のコラムにて詳しく解説しています。
<コラム/コスト削減とは?間接材コストを削減すべき理由と手法について解説>
銀行の売上高に対する間接費比率

間接材コストとは、直接原価や投資以外のその他の雑多な費用項目と定義され、経営課題としての優先順位が後回しにされています。間接材コストが売上高に占める割合は業界によって異なりますが、銀行(都市銀行・地方銀行・信託銀行)の売上高に対する間接材比率は10%~14%といわれています。
間接材コストに対して抜本的にコストを見直せば、営業利益率ベースで数%も改善の可能性があるといえるでしょう。
銀行の主要見直し対象となる間接材とは

間接材コストの見直しでは、まずは年間支払金額が大きな費目から改善余地の有無を検証するのがよいでしょう。業種や業態によってインパクトの大きい費目の順位が異なります。
一般的に銀行の間接材コストに対して割合の多い費目はシステム関連:28%、外注費:15%、人件費:14%、地代家賃:7%となっています。まずこれらの費目のコストが適正なのかを確認してみましょう。
※銀行における間接材コストの割合については弊社刊行の「コスト削減の最強戦略」(東洋経済新報社)参照
コスト削減は単なる価格たたきではない
コスト削減というと、最初に取引先企業に「値段を下げてください」と依頼してしまいがちです。しかし、目指すべきは「見直し余地がある単価や料率を見極め、市況の適正水準に修正してもらう」というコスト削減です。取引上弱い立場にあるサプライヤー企業に対し、無理やり値下げを求めても、中長期的に良好な取引関係を継続することは難しくなります。
また、優位な立場にいる発注側が、発注を受ける側(下請け)に不当な要求をする行為は下請けいじめに該当する場合もあり、下請法(下請代金支払遅延等防止法)や独占禁止法により禁止されています。下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告を受け、企業イメージに多大な影響を受けてしまいます。
価格や料率をコスト分解するアプローチ

現状の支払金額や単価、詳細な仕様を確認して、それが適正か否かを判断することは専門家でもない限り大変難しいことです。適正な単価や料率を見極めるためにコストを最小単位にまで分解することが必要です。価格の根拠となるコスト構造を要素分解していくことで価格の妥当性を評価しやすくなります。
「IT関連の業務委託費」のコスト分解
銀行における間接材コストの割合の多い費目で挙げたシステム関連費目の一部、「IT関連の業務委託費」でコスト分解の例をご紹介します。IT開発などを他社へ業務委託している場合、その工程を個別に分解することでバリューチェーンごとにかかるコストや工数の妥当性を精査することが出来ます。
本来、ノンコア業務を外部へ業務委託することは有効な手段ですが、適正に管理・マネジメントできないと業務実態やコストの内訳がブラックボックス化し、結果的に割高な料金を支払っていたということにもなりかねないので注意が必要です。
IT関連の業務を外部委託した際におこる問題点と解決策
①現場でよくある事例
以下は現場でよくある事例です。思い当たるものがないでしょうか。
- IT関連の業務委託費にかなりの金額を支払っており、毎年増額されている
- 他社への変更が事実上不可能であるため、委託先企業の言うことを聞かざるえない
- IT関連の業務委託費の詳細な内訳を把握できていない
②事象発生時の課題
①の事象が発生している場合の課題は以下の通りです。
- IT関連の業務委託費の内訳を実績ベースでしか把握できていない
- 個人別にどういうスキルの方がどういう業務を行っているのかが不明
- 業務時間に関して、委託先の報告ベースでしか把握していない
- 社内の情報システム部が主導できておらず、IT委託先企業の言いなり
③解決策
課題を解決するための具体的な策は以下のようなものが考えられます。
- 個人別の月額単価と実際の業務内容が合致しているかを確認(現場視察)
- 個人別の業務時間は実測ベースで把握できる体制を確立
PCのリモート管理ツールなどを活用
現地での業務量実績調査を実施(期間限定) - 数年後の委託先変更も見据えて、他の委託先候補企業へ提案/見積もり依頼
IT関連の業務委託費についての課題解決アプローチ昨今、大手企業におけるIT関連の業務委託費は毎年右肩上がりで増加しており、全社的なコスト削減を検討する際に、金額規模的にも最重要費目の一つとなっています。一方で、大手ITコンサルティング会社やSier企業が業務委託している場合、支払金額の内訳がはっきりとわからない(ブラックボックス化している)ため、価格の妥当性も不明であり、増額要請を受けた場合も結局受け入れざるを得ないという状況に陥っています。
④見直し方法
ではどうやって見直ししたらよいのでしょうか。見直しのアプローチ例をご紹介します。
- 人件費単価の妥当性確認
・業務委託先の一人ひとりの月額単価の妥当性を精査 - 必要人数や業務時間の妥当性確認
・業務委託先の報告ベースではなく、直接実測時間の詳細を確認 - 他社からの新規提案/見積もりの取得
・明らかに価格低減の余地があるにもかかわらず、まったく協力姿勢がない場合
こういったアプローチを実施することで、作業内容と作業費(単価×工数)を把握し、コスト構造を分解することで、見直し余地を発見していきましょう。
コスト削減に取り組む際の注意点

銀行のコスト削減において注意すべき点をご紹介します。それはコスト削減によって顧客サービスの質を落とさないことや、従業員の士気低下、ステークホルダーの利益を考慮する必要がある、などです。
例えば、清掃の費用を削減したことによる清潔感の低下や、人件費削減によって銀行のオペレーションが悪化しお客様への対応の質が低下してしまうとお客様の来店意欲をそぐ結果にもなりかねません。顧客満足度が下がることにより利用者数自体が低下し、業績に悪い影響を与える可能性すらあります。コストの面だけに囚われ無理に削減しないように十分注意しましょう。
短期的な結果を出すことも重要ですが、長期的な視点に立って業績向上につながる施策を考えることが重要です。コスト削減は銀行経営に欠かせない施策ですが、バランスの取れた取り組みを行うことが大切です。
<銀行の施設警備費コスト削減事例>
まとめ
今回は銀行におけるコスト削減とは、間接材コストを削減すべき理由とIT関連の業務委託費のアプローチ例について解説しました。自社のコスト構造を把握した上でコストを適正化することで営業利益率の数パーセントを向上することが可能です。ぜひ自社にあったコスト削減を実施し企業の競争力UPを実現しましょう。
現在の不安定なビジネス環境下では間接材のコスト削減は着手しなければならない重要な施策の一つです。自社だけでプロジェクトを進めるのが困難な場合や、社内で取り組むリソースが無い、やり方を教えて欲しいなど、間接材のコスト削減に課題をお持ちの方はぜひプロレド・パートナーズまでご相談ください。
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