コストマネジメント

財務体質とは?自社の財務体質を把握するためのポイントを分かりやすく解説

財務体質とは、その企業の基本的な財務状況のことを指します。財務体質を分析・把握すれば、現在や過去の財務状況から自社にどのような傾向があるのかを理解することができます。

一般的には、株主から調達した資金や、これまでに企業が獲得してきた利益などの「自己資本」の割合が多いほど「財務体質が良い状態」とされています。これは、銀行からの借入金とちがって返済の義務がなく、自由に資金を利用できるためです。逆に「財務体質が悪い状態」は「負債」となる借入金や買掛金の割合が増えた状態を指します。財務体質は企業の財務状況を評価する材料にもなるため、こういった状態では銀行から新たに資金調達を行えなくなる場合もあります。自社の財務体質をきちんと理解し、本来投資するべき点、削減するべき点をしっかり見極めていきましょう。

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自社の財務体質を理解するために必要なもの

財務体質を見極めるためには、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」の3つの用意が必要です。以下では、それぞれをどのように読み解いていくのか解説します。

貸借対照表(B/S)の読み方

貸借対照表は、ある時点(決算日)における企業の資産状況が分かる書類です。
基本的には決算時に作られるものなので、何年分か用意できれば、過去の同時期と比較することができます。貸借対照表には資産・負債・純資産の内訳と金額が記されており、企業がどのように資金を調達しているか(銀行からの「借入金」や、株主からの「資本金」等)、どのような財務状況か(資産と負債どちらが多いか等)を俯瞰的に一覧できます。

財務体質が良い状態であれば、後に入金されることが確定している「売掛金」のような「資産」の数字が大きくなっています。反対に財務状態が悪い状態では、後で支払う必要がある「買掛金」や「借入金」といった「負債」の割合が多くなっているはずです。

ただし、投資活動によって「現金」が減る、有価証券を売却したことで「現金」が増えるといったように、経営活動によって見かけ上の財務状況が好転・悪化することもあるので、必ず数年分を比較して項目の増減をチェックすることをおすすめします。

損益計算書(P/L)の読み方

損益計算書は、その企業における1年間の収入と支出が分かる決算書です。
この1年間でどれくらい利益を出し、どれくらいの費用を支払ったかを比較すれば、企業の収益性や成長性を判断することができます。損益計算書では大きく分けて、5つの利益を把握することができます。

①売上総利益:売上高-売上原価で求めます。
 自社の本業である製品やサービスから得た利益を表し、「粗利」とも呼ばれます。

②営業利益:売上総利益-販管費および一般管理費で求めます。
 製品やサービスを販売するために欠かせない経費を差し引くことで、営業力によって生み出した利益を割り出すことができます。

③経常利益:営業利益+営業外収益-営業外費用で求めます。
 経常利益は会社の本業以外の収益と費用をまとめたもので、株の売却益なども含まれます。

④税引前当期利益:経常利益+特別利益-特別損失で求めます。
 税引前当期利益は、その期に納める税(法人税等)を支払う前の利益額です。

⑤当期利益:税引前当期利益-法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税)で求めます。
 その決算期における最終的な利益であり、「純利益」とも呼ばれます。この数字がマイナスの場合、企業は赤字ということになります。

これらは損益を「会社の本業で発生したもの」と「経常的なもの」で分類しています。そのため、「その年は本業が好調だったのか?」「本業以外での損失は一時的なものか?」等を見極めることができるのです。

財務体質を改善するためには、売上高を伸ばすことと、不要な費用(コスト)を削減することの2つが重要です。一方で、無理やりコストを削減しようとして給与を減らしたり、必要な物品をなくしたりしてしまうと、従業員のモチベーションや品質の低下に直結してしまいます。

詳しくはコラム「営業利益率とは」をご覧ください。

キャッシュフロー計算書(C/F)の読み方

キャッシュフローは大きく分けて以下の3つがあります。
①営業キャッシュフロー
②投資キャッシュフロー
③財務キャッシュフロー

それぞれから分かる現金の動きが異なるので、さらに詳しく見ていきましょう。

①営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフローは、その企業の本業におけるお金の動きを表すものです。営業キャッシュフローのマイナスは、収入より支出が多い=十分な収益を出せていない状態なので、早期改善が必要です。

また営業キャッシュフローには、項目ごとに金額を表す「直接法」と損益計算表から金額を導く「間接法」の2つの方法があります。多くの企業では作成に時間のかからない「間接法」が採用されていますが、「直接法」は各項目の金額から、どうして現金が流出したのか分かるため、財務体質を把握するにはこちらがおすすめです。

②投資キャッシュフローとは

投資キャッシュフローは、資産運用や設備への投資活動におけるお金の動きを表すものです。投資キャッシュフローは、たとえば設備投資を行うとマイナスになることもあります。将来的に利益を生み出すための投資活動は、一時的な判断よりも長期的な視点が必要です。

ただし、財務体質把握のためにこれらを見る場合は、そもそもその投資が必要なのか、その金額に妥当性はあるのかといった点に注目するようにしましょう。

③財務キャッシュフローとは

財務キャッシュフローは、企業がどのように資金調達・返済しているかを示しており、営業や投資とは別の視点から現金の増減を把握することができます。

基本的に、財務キャッシュフローがプラスになるときは資金調達が活発に行われている状態、マイナスの場合は配当金支払いや返済の方が多くなっている状態を指しています。新規事業に投資をしている等、企業活動を上向けるための資金調達であれば問題ありません。しかし一概にプラスだから良い、マイナスだから悪いと言えない場合がありますので、営業キャッシュフローと比較することをおすすめします。

また、他の財務諸表と同様に、数年分を比較することで傾向を掴むことができますので、可能な範囲で過去のものも用意しましょう。

収益性を割り出す

企業の収益性を判定する際には、「総資産利益率(ROA)」、「株主資本利益率(ROE)」という指標があります。これらの数値は、本記事で触れてきた財務諸表の数字を応用することで割り出すことができます。以下ではそれぞれの数値をどうやって計算するのか、何を読み解くことができるのかを解説します。

総資産利益率(ROA)とは

損益計算書(P/L)に記載されている「利益」÷「総資産」で求めることができます。
株式投資の指標にする際は「利益」に「当期純利益」を当てはめる場合がほとんどですが、たとえば「営業利益」を入れれば「総資産を効率的に営業活動へ利用できているか」が分かります。目的に応じて、「当期純利益」「営業利益」「経常利益」を当てはめてください。

また「総資産」は「固定資産」「流動資産」「繰越資産」など多岐にわたる上、なかには融資を受けている金額も含まれています。それらすべてを「総資産」に当てはめることで、「融資を含んだ資産をうまく活用できているか」を判断することができます。

具体例
A社:当期純利益200万円、総資産1,000万円
B社:当期純利益50万円、総資産100万円

A社→200÷1000=20%
B社→50÷100=50%

B社の方が総資産に対して得られる利益が多いことが分かります。このように、企業規模がまったく異なる場合でも、数値をもとに同じ視点で分析することが可能です。

株主資本利益率(ROE)とは

企業の総資本のなかでも、株主等から調達した「資本金」や「利益剰余金」といった、返済義務がない資金を「自己資本」と言います。ROEは「当期純利益」÷「自己資本」で求めることができます。

この数値が大きくなるほど資本を上手に活用できているとされ、一般的にはROEが10%を上回ると投資価値のある優良企業と見なされます。一方で、ROEはあくまで投資判断に役立てる指標であり、また計算式に「負債」が含まれていないことから、実際の経営状況と乖離する場合もあり得ます。

具体例
A社:総資産1,000万円(負債900万円、自己資本100万円)、当期純利益50万円
B社:総資産1,000万円(負債200万円、自己資本800万円)、当期純利益50万円

A社→50÷100=50%
B社→50÷800=6.25%

このように、一見して「負債」が多い方がより効率的に利益を上げているように見えることもあるため、ROEを計算する際は必ず「自己資本」と「負債」の比率もあわせて確認するようにしましょう。

財務体質を改善する必要性

冒頭でご説明したとおり、財務体質が良いとされる状態では「返済義務のない資金=自己資本」の比率が高いことが一般的です。自己資本比率が高ければ、以下のようなメリットが発生します。

・設備投資や新規事業展開、資金調達(融資)等が景気変動に左右されにくくなる
・同じ売上額でも、収益性がより高くなる
・定期的に財務体質を見直すことで、企業独自の強みを把握し伸ばすことができる

安定した財務状況は企業方針や経営戦略の基盤であり、経営活動がより一層発展・展開するための足掛かりです。まずは現状を把握することから始めてみましょう。

財務体質を改善するためのコスト削減

財務体質を改善するためには、大きく2つの手段があります。1つ目は売上を伸ばして、企業への収入を増やす方法です。企業によっては多店舗展開のように新規投資の必要があったり、広告費をはじめとした販管費の「初期費用」がかかったりする場合もありますが、最終的に利益を上げることができれば財務体質を改善可能です。
2つ目はコストを削減し、企業からの支出を減らす方法です。コスト削減は景気変動の影響を受けにくく、自社内で完結させられることが最大のメリットです。なかでも「間接費」と呼ばれるコストは、契約プランの見直しや乗り換えで、大幅なコスト削減につながることがあります。数年の間で市場価格が変わる費目もあるので、契約内容を確認しないまま更新を続けている場合は、あらためて契約書や領収書を確認しましょう。

間接費のコスト削減について、詳細は以下のコラムもぜひご覧ください。

まとめ

財務諸表をあらためて読み解くと、実は、自社の財務体質に関する情報が詳細に記載されていることがよく分かります。一度きりのプロジェクトとしてではなく、定期的に振り返り、都度現状を把握し数年の動向を比較することをおすすめします。

また「分析は終了したもののどこから手をつけていいか分からない」といった場合は、サービス品質や従業員のモチベーション低下につながりにくい「間接費」の削減から取り組んでみてください。

プロレド・パートナーズでは50費目以上の間接費に専門のコンサルタントを配置し、様々な業界・業種の企業様をご支援してきました。コスト削減をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。

 

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