SCM/物流

物流のラストワンマイルとは?課題や取り組みなど詳しく解説

EC市場の拡大によって、企業や個人への配送ニーズは右肩上がりを続け、特にコロナ禍においてその拡大は著しく宅配便以外の輸送手段も定着しました。コロナ後は徐々に落ち着きを取り戻してはいるものの、現在でも需要は緩やかに成長しています。こうした中で大きな課題を抱えているのが、ラストワンマイルの配送サービスです。

物流のラストワンマイルとは、配送センターから消費者へ商品を受け渡す最後の接点のことを言います。現在、多くの物流企業が、ラストワンマイルの課題解決に向けた取り組みを実施しています。まずは、ラストワンマイルの課題を明確にし、改善の優先順位をつけていくことが重要です。そこで本記事では、物流のラストワンマイルの概要や直面している課題、業界がどのように課題解決に向けて取り組んでいるのかを詳しく解説します。そして、最新の技術や取り組みによって、ラストワンマイルの配送がどのように変化していくのかについても取り上げるので、ぜひ参考にしてみてください。

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ラストワンマイルとは

物流における「ラストワンマイル」とは、物流の最終拠点からエンドユーザー(物品を受け取る人)に届くまでの区間のことを言います。

また、「ラストワンマイル」は元々、通信業界で用いられていた言葉で、個人や企業に対して通信接続を提供する最後の区間という意味を示していましたが、現在は物流業界においても多く用いられるようになりました。

ラストワンマイルの現状の課題

ラストワンマイルの物流サービスの向上は、新規参入者が次々と増えるEC市場で生き残るための重要な要素のひとつとなっています。しかしその反面で、次のような課題も抱えています。

  1. 都市部と地方の配送環境の違い
  2. 環境への影響
  3. ドライバー不足と雇用問題
  4. 消費者のニーズの変化

それぞれ見ていきましょう。

1.都市部と地方の配送環境の違い

一つ目の課題として挙げられるのが、都市部と地方との配送環境の違いです。

東京や大阪などの都市部は、建物が林立していることから道幅の狭い道路が多く、目的地の目の前に駐車できません。そのため、駐車場所から受け取り手へたどり着くまでに時間がかかります。また、交通量の多さを原因とした交通渋滞が発生すると、効率的な配送が難しくなります。

一方、地方への配送は、都市部に比べて配送件数が少ない反面、一つ一つの配送場所が離れていることから時間がかかり、輸送コストが高くなる傾向があります。

2.環境への影響

ラストワンマイルの物流では、店舗などに輸送するときと比べて、1件当たりの輸送量が少なくなるため、輸送効率が悪くなる傾向があります。しかし、リードタイムの短縮が求められる昨今では、短時間での配送を実現するために、輸送効率よりもスピードを重視する状況が多く生じています。輸送効率の悪化によって、物量当たりの走行距離が長くなると、CO2の排出量も増え、環境へ負担も増えます。

3.ドライバー不足と雇用問題

ラストワンマイルでは、配送を行うトラックドライバーの存在が不可欠です。

しかし、物流業界では現在、2024年問題を要因とした収入減少に伴う離職率の増加や、若者の業界離れによるドライバーの高齢化など、深刻なドライバー不足に直面しています。

こうした現状に追い打ちをかけているのが、ラストワンマイル配送の需要拡大です。

ラストワンマイルでは、1人のトラックドライバーが配送できる物量が限られており、且つ個人への配送は再配達も発生するため、より多くのドライバーが必要になります。

ドライバー不足を解消しようと、待遇や労働環境の改善に取り組んでいる企業が増えてはいるものの、物流業界に刷り込まれた低賃金・長時間労働というイメージから、若い世代が他の業界や業種を選択する傾向があるため、求人を出しても中々人が集まらない状態が続いています。

4.消費者のニーズの変化

昨今のEC市場の拡大に伴い、送料無料や即日配送などの物流サービスに対する消費者のニーズはもはや当たり前のものとなっています。このような消費者ニーズに応えるためのサービスは、ドライバーに大きな負担を与え、配送の遅延や輸送サービスの質の低下につながる恐れがあります。

また、再配達もラストワンマイルに悪影響を与えています。再配達が発生すると、同じ配送先へ複数回向かう必要があるため、ドライバーの負担が増えます。さらに、車のガソリン代や持ち戻った荷物の管理工数が発生するため、運送会社ではさらにコストがかかります。

課題解決への取り組み

このような課題を受けて、物流業界では解決に向けた取り組みが進められています。
ここからは、ラストワンマイルの課題を解決へと導く代表的な3つの取り組みを紹介します。

  • 受取方法の多様化
  • テクノロジーの活用
  • 持続可能な配送オプション

順番に見ていきましょう。

受取方法の多様化

物流業界では、ラストワンマイルの課題解決に向けて、宅配ロッカーやコンビニ受け取りなどを活用した配送方法の多様化を進めています。宅配ロッカーやコンビニ受け取りを利用すれば、受取人が不在の場合でも荷物を届けられるため、配送効率の向上につながります。

また、近年では配送方法に「置き配」をラインナップする企業も増えています。これによってラストワンマイルにおける顧客満足度が向上するだけでなく、再配達の削減にもつながります。

テクノロジーの活用

ラストワンマイルの課題解決には、ビッグデータに対するAI活用も効果的です。具体的には、蓄積されたビッグデータをAIが活用し、事前に設定した条件を基に、最適なルートを選定するというものです。近年、AI技術が急速に発展したことによって、100カ所以上の配送場所を回る場合でも、5分程度で効率的な経路の作成ができ、配送ルートの最適化が容易に行えるようになりました。

また近年では、シェアリングエコノミーやクラウドソーシングサービスを活用した配送方法にも注目が集まっています。シェアリングエコノミーとは、個人や法人が所有しているにも関わらず、現在使われていない財産を共有することです。これには、複数の場所から発送された荷物を、一つの倉庫等で集約してから配送するといったケースが事例として挙げられます。一方のクラウドソーシングサービスは、今すぐ荷物を届けたい荷主とドライバーをつなぐサービスです。集荷先の近くにいるドライバーの条件を入力するだけで配送を依頼できます。

さらに、近年都市部などで注目されている新しい配送方法として、ドローンや自動運転技術の活用が挙げられます。ドローンは道路状況に左右されないため、交通渋滞が頻繁に起こる都市部での配送に有効な手段です。また、自動運転技術の活用は、ドライバー不足に対応できる有力な手段であり、実用化に向けた取り組みが進んでいます。

持続可能な配送オプション

近年、物流業界では、トラック走行時に排出されるCO2による環境負荷を受けて、電気自動車や電動スクーターなど、環境に優しい配送手段の導入が進んでいます。中でも電動スクーターは、環境への負担を減らすだけでなく、トラックでは侵入できない路地や、駐車が困難なビジネス街でのラストワンマイル配送にも効果的です。電動自転車や電動スクーターを有効的に活用することにより、環境負荷の低減が期待できるでしょう。

今後の展望

ラストワンマイルの今後の展望としては、さまざまな技術の進化によって、より効率的で持続可能な配送が実現していくと考えられます。

技術的な面では、自動運転やドローンの技術が進化するにつれて、特に地方の配送について、従来のラストワンマイルの配送サービスにとって当たり前だった「人が関わる」というあり方自体を変える動きが強まっていくでしょう。

例えばドローンは、道路を走行せず、空中を自由自在に動いて荷物を届けられることから、人が運ぶよりも効率的かつ安全にラストワンマイルの配送を行えます。また、自動運転が実用化されれば、ドライバーがいなくても、今まで通りの荷物を配送できるようになります。配送の効率化が進むだけでなく、輸送コストや人件費が削減されるとともに、交通渋滞や環境への負担も軽減できるでしょう。

また、IoT(Internet of Things)技術も、ラストワンマイルの配送サービスに、プラスの影響を与えていくと考えられます。

現在多くの企業で、物品の流通過程を追跡できるトレーサビリティがすでに導入されており、どの拠点を通過したのかまでを確認できるようになっています。しかし、IoT技術がさらに進めば、物品が物流拠点から消費者に届くまでのリアルな位置や、温度の変化なども確認できるようになります。これによって、商品の品質を管理しながら、最適な状態での配送が実現できると考えられます。

今後もラストワンマイルの物流サービスを続けていくためには、消費者の行動変容が不可欠です。具体的には、急いで受け取る必要のない荷物は余裕を持った配送日時を指定したり、コンビニや宅配ボックスによる受け取りを活用して再配達率を減らし、ドライバー負担を和らげたりするなど、ラストワンマイルにおける物流負担を軽減するための消費者側の意識改革が、今後重要になります。

まとめ

ラストワンマイルの配送サービスは、EC市場の拡大に伴って需要が高まっていますが、それと同時に、都市部と地方の配送環境の違いや環境への影響、ドライバー不足など、さまざまな問題を抱えています。課題を解決する具体的な取り組みには、配送方法の多様化やテクノロジーの活用、持続可能な配送オプションの導入が効果的です。本記事を参考に、ぜひ取り組んでみてください。

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