コストマネジメント

コスト削減とは?間接材コストを削減すべき理由と手法について解説

コスト削減と聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。「リストラ」といったマイナスイメージや「経費節減」のような会社から言われて嫌々やるものと考える方は多いのではないでしょうか。しかし、コスト削減は変化の多い現代の経営環境においては決して避けては通れない施策の一つです。

本コラムではコスト削減の概要と間接材コストの削減について解説します。ぜひ今一度コスト削減について考えてみてはいかがでしょうか。

コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。

 

コスト削減とは

企業経営におけるコスト削減とは、「自社の利益を増やすこと」です。

まず、コストとは企業の事業活動をする上で必要な費用のことで、経費とも呼ばれます。オフィス賃料や人件費、光熱費などと共に時間、例えば会議や通勤時間もコストと呼ばれることがあります。次に、利益とは簡単にいえば「売上―コスト」で計算できます。コストが減れば利益が増えるため、コスト削減によって利益を増やすことができるといえます。

コスト削減にマイナスイメージを持つ方もいらっしゃるかと思いますが、それは「リストラ・人員削減」等の人件費の削減を思い浮かべるからでしょう。一方で、企業が利益を創出する手段は「売上を上げる」か「コストを下げる」の2つしかありません。売上は外部環境に大きく影響を受けますが、コストに関しては検討から決断まで自社で完結できるため利益創出のための有効な施策といえます。

企業経営におけるコストとは

企業経営には様々なコスト(経費・費用)が掛かっています。そのコストも「固定費・変動費」、「直接費・間接費」など様々な呼ばれ方をしており、業種・業態によって内容も異なります。

一般的に固定費の代表格として人件費が挙げられますが、人材への投資は将来に向けた成長エンジンへの投資でもあるためむやみに削減すると企業の中長期的な成長に悪影響を及ぼすと考えられます。先に述べた通り、コスト削減の目的は企業の利益を増やすことです。その目的を達成するためには、売上を上げるために必要なコストは削ってはいけません。それぞれのコストの特徴を正確に把握し、それぞれにあった削減施策を実施することが大切です。

なぜコスト削減が必要か

昨今、コロナウイルスに端を発した社会的規制による売上の急減や、国際情勢の不安定化に伴う原材料価格の高騰により、企業の業績や収益は大きく影響を受けました。こうした非常事態はいつまた起こるかわかりません。企業は予測不可能な事態に対応するために何をすべきなのでしょうか。それは、事業状況に応じて固定費を徹底して見直し、損益分岐点を下げ、非常事態でも利益を確保しやすい筋肉質な事業体質にすることです。

「コストを5%削減」することの価値は、「売上を10%増加」させるのと同じかそれ以上の価値があります。例えば、1,000万円の売上があり利益率が20%の場合、利益は200万円となります。売上を10%増加させた場合、売上1,100万円、利益は220万円となり利益20万円の増加です。これがコスト削減の場合、売上1,000万円のうち800万円のコストを5%削減すると、40万円を利益として計上することが出来ます。もちろん実際はこんなに単純な話ではありませんが、売上を増やす大変さは誰もがご存じの通りです。企業経営におけるコスト削減の重要性をしっかり認識しコスト削減に取り組みましょう。

なぜ間接材のコスト削減なのか

間接材コストとは、直接原価や投資以外のその他の雑多な費用項目のことです。この間接材コストを削減すべき理由が3つあります。

  • 営業利益に与える影響の大きさ
  • 管理不足による削減余地
  • 事業成長にマイナスの影響がない

営業利益に与える影響の大きさ

1つ目は、営業利益に与える影響の大きさです。間接材コストは原価や人件費と比較すると多種多様な費目が混ざっていますが、売上高に対して間接材コストは5%~25%程度を占めています。全社的に取り組むことで、間接材コストを5%以上見直すことも可能なため、営業利益ベースで数%改善できる可能性があります。

管理不足による削減余地

2つ目は、管理不足による削減余地があることです。原価や人件費に関してはすでに全社的に一元管理され長年の担当部署がマネジメントし、常に経営層の監視下で強い最適化圧力が働いているため削減余地が少ないといえまです。それらと比較すると、間接材コストは多種多様な費目が拠点別や事業部別にバラバラに管理され、現場の担当者しか詳細な取引内容や条件を把握できていないものも多いため、見直し余地が多いと考えられます。

事業成長にマイナスの影響がない

3つ目は、事業成長にマイナスの影響がないということです。間接材コストは「間接」というだけあって抜本的に見直してコスト削減したとしても、将来の事業成長にマイナスの影響を及ぼしません。間接材コスト自体が成長の源泉というよりは、事業運営するうえでどうしても必要なコストという意味合いが強いため必要最低限の仕様やサービスレベルを見極めることで、現状よりも踏み込んだ見直しが可能です。

社内にはまだまだ「埋蔵金」が眠っています。間接材コストを削減することで企業としての競争力の強化・成長を目指しましょう。

間接材コスト削減の手法と手順

コスト削減といっても、いきなり取引先に値下げ依頼や価格交渉をしてはいけません。コスト適正化を達成するためには事前準備などのステップを踏む必要があります。ここではコスト削減に取り組む際、最初にやるべき事前分析と準備について解説します。

事前分析①:総勘定元帳データから全体像を把握

多くの企業では間接材の支払いは一元管理されていません。ではそのような状況で、どのように見直し対象を特定し検討を進めていけばよいのでしょうか。

まずは間接材に関して「年間で何にいくら支払っているのか」を全体把握していきます。経理部署が保有している全社の支払いデータ(総勘定元帳)を分析し、勘定科目ごとの年間支払額と支払先企業を把握しましょう。

経費支払家庭の処理データの集合体でしかない総勘定元帳から、間接材の個別費目別での年間支払額を確認するためにはデータの加工と集計が必要です。

【手順】

1 損益計算書(P/L)の間接材コストを抽出
・コストに関する勘定科目以外は除外
・原価や直接材の費用は除外

2 コスト見直し対象となる費目を絞り込み
・税金や研究開発費などの見直し対象外費目を除外

3 分類して名付け(ラベリング)
・勘定科目で大中小を分類
・支払先企業別で分類

4 集計した後、優先順位付け
・支払い金額が大きい順に一覧で表示

事前分析②:対象費目を優先順位付け

事前分析の初期段階では、総勘定元帳の支払いデータを年間支払額の大きい順に並べ、見直しによる財務インパクトが大きそうな費目から優先順位を付けていきます。さらに、金額の大小だけでなく、各費目の特性に着目すると見直しできそうな費目が見えてきます。

コスト見直し余地が大きい可能性がある費目の特徴は

  • 年間支払総額が相対的に大きい
  • 取引先と契約更新タイミングが近い
  • 市況トレンドが下落傾向にある

などです。

このような観点からコスト削減に取り組む優先順位を付け、最優先費目から着手していきます。また、たとえ少額であったとしても短期間でコスト削減成果を創出できそうなシンプルな費目の優先順位を上げる、という視点を持つことが重要です。

今後、社内の他部署を巻き込むための実績づくりが重要となるため、この視点を忘れないようにしましょう。

事前準備①:現場担当者がコスト削減活動に否定的である4つの理由

コスト削減を成功させるためには、「コスト削減に取り組む現場担当者に積極的に取り組めるようにする動機づけ」と「見直しを行わない“聖域”を作らないこと」が鍵となります。この2つが障害となりコスト削減が進まない原因となります。障害が生まれる背景と対応策を紹介します。

まず、現場担当者がコスト削減活動に否定的になってしまう理由は以下の4つです。

  • コスト削減を実施しても評価されない
  • 日常業務が忙しく、手が回らない
  • コスト削減が出来てしまうと担当者として非難される
  • 他人に横やりを入れられたくない

例えば、大幅なコスト削減が実現した際に経営陣から「今まで何をやっていたんだ!」などと言われ、むしろ人事評価がマイナスになると懸念する担当者もいます。現任の自分が非難の対象になることを恐れ、非協力的になることも珍しくありません。

会社としてコスト削減に取り組む際には、経営陣が担当者に対して、現状からどれだけ見直せたのかを評価し、その成果が大きいほど高く評価するといった仕組みを作ることが必要です。

事前準備②:なぜ「聖域化」された領域ができてしまうのか

次に、コスト見直しの打診をした場合に「すでに自分たちで取り組んでいる」という理由で見直しを拒否する部署があることも少なくありません。見直せる領域を“聖域”として手出しできなくしてしまいます。聖域化してしまう典型的なパターンは以下の4つです。

  • 専任担当者の長期固定による蛸壺化
  • 取引先との今後の取引継続を前提とした馴れ合い
  • 部署間の連携不足
  • 合理性よりも慣習やメンツを重んじる文化

聖域化の背景として「創業時からの取引先企業で同郷だから」「あの時、無理を言って協力してもらったから」などの感情的な理由である場合が多々あります。取引先企業と長期的に良好な取引関係を維持することは重要ですが、合理的な理由もなく見直しをせず、長年割高な取引条件のままになっていることも珍しくありません。こういう部分に多くの改善余地や無駄が潜んでいます。

こういった場合は、社長や役員レベルが先頭に立ち合理的な見直しを断行するという強い意思表示をすることが必要です。ただ、関係性がセンシティブな場合も多いので働きかけかたにも工夫が必要です。例えば、新規取引先候補企業に見積もりや提案を打診し、どの程度の改善余地があるのかを確認します。改善余地が大きいと判断した場合「複数の他社から良い提案をもらっているので、他社水準並みに見直してもらえないか」など客観的な根拠を持って依頼してみると、協力してもらえる可能性が高まります。

コスト削減に取り組む際の注意点

コスト削減の取り組みに際して特に注意すべき点は「下請けいじめ」です。下請いじめとは、優位な立場にいる業務の発注側が、発注を受ける側(下請け)に不当な要求をする行為を指し、下請法(下請代金支払遅延等防止法)や独占禁止法により禁止されています。下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告を受けます。ニュースなどで勧告を受けた企業の名前や内容を目にしたことがあるのではないでしょうか。

無理な値下げ交渉は下請けいじめに繋がります。コスト削減は単に取引先企業に対して値下げを要請することではありません。ゼロベースで必要な仕様や取引条件を見直し、新しい候補先企業を含めて徹底的に検討することは、サービスレベルが高くてコスト競争力のある企業の発見や新しい取引開始の機会を生みます。自社のコストを徹底的に見直すことが、結果的には取引先の業界内の優秀な企業にとって新たな事業拡大・成長の機会を提供することにもつながり、中長期的な業界の新陳代謝を促すのです。コスト削減を通じて取引先企業とのWIN-WINの関係を構築しましょう。

まとめ

今回は企業経営におけるコスト削減とは、間接材コストを削減すべき理由、削減に取り組む最初の一歩について解説しました。すでにコスト削減に取り組んでいる、コスト削減の大切さを認識しているという方も、、改めてコスト削減について深く考えていただけたのではないでしょうか。。本コラムを読み、間接材コストの削減に取り組まれ、皆様の企業の競争力UPに繋がれば幸いです。

現在の不安定なビジネス環境下では間接材のコスト削減は着手しなければならない重要な施策の一つです。自社だけでプロジェクトを進めるのが困難な場合や、社内で取り組むリソースが無い、やり方を教えて欲しいなど、間接材のコスト削減に課題をお持ちの方はぜひプロレド・パートナーズまでご相談ください。

コストマネジメントのお悩みを解決したい方へ

プロレド・パートナーズでは、コストマネジメントのコンサルティングを承ります。 自社の現状把握や、実行支援をご検討される際にはお気軽にご相談ください。

 

関連記事

TOP