SBTとはなにか
SBTとは、「Science Based Targets」の頭文字をとった言葉で、日本語では「科学的根拠に基づいた目標」と訳します。
パリ協定で求められている温室効果ガスの削減を達成するために、企業が定める科学的根拠に基づいた削減目標のことです。
CDP(旧Carbon Disclosure Project)・UNGC(国連グローバル・コンパクト)・WRI(世界資源研究所)・WWF(世界自然保護基金)の4つの機関が共同でSBTのサイトを運営をしています。
SBTでは、サプライチェーン全体で排出されるCO2を対象としています。サプライチェーンとは原料調達から廃棄に至る全ての企業活動を指しています。
出展:環境省 SBT(Science Based Targets)について
スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3 : スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
上記のとおり、自社だけでなく3つのスコープ、いわば企業活動全体でのCO2削減が求められるということです。
SBTの認定企業になるためには、目標の設定や排出量削減の進捗状況を報告、定期的な目標の妥当性の確認など、多くの手間が発生します。しかし、SBTの認定を取得すれば、以下のようなメリットがあります。
- 環境問題に科学的根拠に基づいた目的を持って取り組む、持続可能な企業だと外部にアピールできる
- SBT認定で野心的な目標設定することにより、省エネ、再エネ、環境貢献製品の開発など脱炭素化の取り組みを推進できる
- SBT認定により、CDP採点に優位に働く
環境省が行ったアンケートによると、SBTにコミットした企業のうち全体の79%が「SBTへのコミットがブランドの評価を向上させている」と回答しました。SBTの認定には手間がかかりますが、それ以上に多くのメリットがあると言えるでしょう。
日本でSBT認定を受けている企業は233社(2022年8月時点)
SBT認定を受けている企業は年々増えています。日本では、2022年8月1日時点での認定企業は233社、2年以内にSBT設定を表明しているコミット企業は56社です。
世界的には77か国・3465社が参加していて、国別ではイギリスが259社・アメリカが239社・日本が233社となっています。
出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」
SBTの認定を受けている企業は、建設業や製造業(食料品・科学・医薬)、機械小売業などさまざまな分野にまたがっています。世界的には食料品製造業の企業がSBTの認定を受けることが多く、日本では電気機器や建設業が多くなっています。
なお、金融業は業種別の認定基準を検討中の段階なので、現在は認定作業が行われていません。銀行や証券会社などは環境問題に対する意識が高いので、認定基準が定まればSBTへの参加企業はさらに増えるでしょう。
SBT認定企業リスト
ここでは、SBT認定を受けている企業を紹介します。
味の素
SBT認定目標
1.5℃
目標年度
2030年
取組内容
- 生産活動に使用する燃料をバイオマスボイラーなど環境負荷が少ないものへ転換
- 蒸気をできるだけ使わない製造プロセスの開発
- プラスチック廃棄物の削減、フードロス削減
ソニー
SBT認定目標
1.5℃
目標年度
2035年
取組内容
- 製品の原材料調達から製造、物流、使用、廃棄までのライフサイクルすべて環境負荷をゼロにする
- 使用済み製品の再資源化を進めて新たな採掘資源の使用をゼロにする
- 環境負荷の少ない輸送を実現するために鉄道や船舶を積極的に利用する
NTTドコモ
SBT認定目標
1.5℃
目標年度
2030年
取組内容
- 基地局への5G省電力装置の導入などネットワークの消費電力削減を推進
- ドコモショップへの太陽子パネル設置や電力会社の再エネプランを活用して、再エネ比率100%を目指す
- ユーザーの温室効果ガス削減への貢献度を見える化するプラットフォームを立ち上げ、誰でも楽しく取り組めるようにする
キリンHD
SBT認定目標
1.5℃
目標年度
2030年
取組内容
- 早期にRE100を達成するとともに、自社の使用エネルギーを100%再生可能エネルギー起源にする
- リサイクル材やバイオマスなどを使用した、持続可能な容器包装にする
- 日本国内の水源の森活動をさらに推進
東急不動産ホールディングス
SBT認定目標
1.5℃
目標年度
2030年
取組内容
- 2025年には自社の再生可能エネルギー事業におけるCO₂削減量が、グループ全体のCO₂排出量を上回るカーボンマイナスを目指す
- ステークホルダーとも連携し、LEED、CASBEEなどの環境性能認証の取得に取り組む
- グループ社員のサステナビリティ(環境テーマを含む)に対する意識を高めるために数々のプログラムを提供し、トレーニングに取り組む
SBT認定を受けるフロー
SBT認定を受けるには、以下のように手順を踏んで申請を行います。
- SBT事務局に「Commitment Letter」を提出する
Commitment Letterとは、2年以内にSBTの目標を設定するという宣言書です。フォーマットが用意されているので、SBTの公式ページからダウンロードできます。
【ダウンロード場所】
SBT公式ページ→Set a target→GET STARTED→COMMIT内「SBT Commitment Letter」 - SBT目標を設定して、目標認定申請書を事務局に提出する
申請書には、企業名などの基本情報やバイオエネルギーに関する質問。削減目標など12点を記載します。こちらの申請書もSBT公式ページからダウンロードできます。
【ダウンロード場所】
SBT公式ページ→Set a target→GET STARTED→SUBMIT内「SBTi Target Submission Form」 - SBT事務局による審査
申請書をもとに事務局が審査して、後日メールで回答が行われます。 - 認定後は進捗状況を定期的に報告して開示する
SBTは認定されたら終わりではなく、年に1回の報告と開示が義務付けられています。 - 目標の妥当性を定期的に確認する
目標を設定した後も、その目標がベストなのか、最新の気候科学との整合性はあるのかなどを確認するために、定期的な見直しが必要です。最低でも5年ごとに目標の見直しを行い、必要であれば目標の再計算や再検証が必要になります。
SBT認定は中小企業も受けられるのか
SBT認定を受けるフローを見ると、「なんだか難しそうで中小企業には対応できない」と感じるかもしれません。しかし、以下の表のように、中小企業がSBT認定を受けている例は多数あり、年々増加しています。
出典:環境省/経済産業省「SBT 概要資料」
日本には約421万の企業がありますが、そのうち中小企業の割合は99.7%です。温室効果ガスの排出量を削減するためには、企業の大部分を占める中小企業の取り組みは欠かせません。実際に、従業員数100名以下の企業がSBT認定を受けた事例もあります。
SBT認定を受けるための要件に企業の規模は含まれていないため、従業員が少なくても問題ありません。ただし、社内の人的リソースが不足している、ノウハウが少ない、などの理由で何から始めたらいいのか分からない場合もあります。そのようなときは、外部の専門家に依頼を検討すると良いでしょう。
まとめ
SBTとは、パリ協定で求められている温室効果ガスの排出量削減のための目標です。この目標は科学的根拠に基づいている必要があります。
SBT認定を受けている企業は、日本では2022年8月1日時点で233社あり、世界で第3位となっています。電気機器や建設業がSBT認定を取得するケースが多いですが、医薬品・食料品・通信業界など多くの分野の企業が取得しています。
現在、環境に関するご相談につきましてはプロレド・パートナーズのグループ会社であるナレッジリーンにて対応させていただいております。ナレッジリーンでは、脱炭素経営やカーボンニュートラル戦略の策定、環境分野の調査業務、計画の立案等、企業の環境経営全般に対する専門的なコンサルティング支援を行っています。環境に関する取り組みでお悩みの際は、ナレッジリーンまでお気軽にご相談ください。
プロレド・パートナーズグループ企業のナレッジリーンでは環境分野の調査業務や計画策定、脱炭素経営・カーボンニュートラル戦略策定のサポートが可能です。
環境分野でお困りの際は、お気軽にご相談ください。