2024年問題を目前として、「何とかして物流コストの高騰を防ぎたい」と考える荷主企業の方も多いのではないでしょうか。差し迫ったドライバー不足によって、物流業界のみならず、社会基盤としての物流への影響まで懸念されています。
本記事では、物流業界の現状と課題を踏まえた上で、いくつかの対応策をまとめています。現状を打開して事業を好転させたいと考えている方は、ぜひご参考にしてください。
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物流業界の現状
国内の貨物量は、2020年にコロナウイルス感染症の影響で、大幅に減少したものの、直近5年間ではほぼ横ばいに推移しています。一方、通販需要拡大により、全輸送に占める宅配便の割合が高い傾向は続いています。
活況している通販業界の一方で、物流への需要に対して働き手が不足している状態が、物流業界の現状です。人手不足はすぐに解決できないため、まずは生産性を上げることを考えなければいけません。人件費の上昇を前提とした効率化が必要となります。
物流業界の抱える課題
物流業界が抱える課題は、労働環境の厳しさと低賃金による働き手不足です。労働力の不足は深刻化しており、2024年のドライバー労働時間規制による問題は、もう目前にまで迫っています。
物流業界が抱える課題は、次の3点です。
- 物流を取り巻く環境変化
- 物流労働力の不足
- 物流生産性の低さ
1.物流を取り巻く環境変化
最近課題となっている環境の変化は、「EC物流の増加」、「燃料費の高騰」、「災害の激甚化」です。
ECサイトで手軽に商品を買うことが当たり前の時代となり、ECへ参入する企業が増加した結果、EC事業者間の競争がより激しくなっています。そのため、納品リードタイムの短縮など物流に求められるサービスレベルも年々高まっています。
燃料費に関しても、短期・中長期ともに上昇のトレンドにあります。
年々増加する激甚災害に対するBCP対策も大きな環境変化の一つです。
2.物流労働力の不足
物流業界の労働力不足は最も大きな課題です。経済産業省と国土交通省、農林水産省がまとめた「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、働き手の内訳は若年層と高齢者が少なく中年層の割合が高くなっており、全産業に比べて労働時間が約2割長くなっています。
さらに、トラックドライバーの年収は全産業と比較して5%〜10%低く、働き手不足の要因の一つとなっています。直近ではガソリン代の高止まりによる燃料費の上昇により、物流会社の経営が圧迫された結果、ドライバーの待遇改善の見通しが悪くなりつつあります。
労働環境や待遇の改善を行わなければ、物流業界で働く人はますます減少し続けるでしょう。
出典:「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
3.物流生産性の低さ
働き手不足もさることながら、EC拡大による小口発送の増加や荷主企業と消費者の求めるサービスレベルの高まりにより物流生産性は低下の一途を辿っています。
コロナ禍でのECサイトの隆盛は、商品1つでもためらいなく注文してしまう習慣を生みました。個人宅への小口配送は以前にくらべて大幅に増加しています。
企業への大口配送に比べて、個人宅への小口配送は多くの人手と労力が必要です。個人宅への配達において再配達が当たり前の現状では、物流生産性が上がる見込みはありません。
また企業間取引においても、小ロット多頻度による荷受け側企業の効率化が重視されている状況も継続しており、サプライチェーンの観点から、根本的な構造の改革が必要な時期が来ています。
物流業界の課題への対応策
日本を支える重要なインフラである物流は、抜本的な改善なくしては立ち行かなくなる可能性があります。物流業界が抱える課題への対応策についてご説明します。
1.物流DX推進によるサプライチェーンの最適化
サプライチェーンとは、商品の製造から消費までの一連のプロセスを指します。物流DXの推進によるサプライチェーンの改善が必要となっています。
物流DXの業務変革ポイントは、次の4点です。
- 在庫管理の効率化
- 最適な配送ルートの選定
- 倉庫内の自動化
- 物流の品質強化
在庫管理は物流の要ともいうべき重要な業務です。物流費が上昇を続ける中でサプライチェーン・コストの上昇を抑制していくためには、効率化が重要となります。在庫管理はサプライチェーンの要でもあります。需要予測の精度向上による在庫の適正化にはDXによる業務改革も有効となります。
物流の品質強化と、最適ルートの割り出しも物流DXなくしては成し得ません。これまでの配送データの活用によって、最適ルートの割り出しは瞬時にできるようになります。
物流DXで成し遂げられる課題解決は結果として総合的な物流品質の向上につながり、より好循環を生み出すことが可能でしょう。
2.労働力不足対策と物流構造改革の推進
物流のシステム化と同時に、根本的な働き方改革も必要です。厳しい労働環境のもとに人が集まることはありません。
労働時間が長く環境が悪くなっている場合、労働時間の見直しが必要です。
まずは、現状のドライバーの働き方を把握します。トラックドライバーの主体作業は運転ですが、積込みや荷降しなどの付帯作業が占める割合が高いことが生産性の低下につながっています。この付帯作業を定量的に可視化できれば、有効なルートの設定や荷物の待ち時間の削減など、具体的な対策が可能です。
2024年度からドライバーの時間外労働は「年間960時間」に制限されます。
1日や1ヶ月あたりの規制がないため、繁忙期に時間外労働を行った場合は、他の月で調整を行い年間の時間外労働時間を限度内に調整することになります。
また、時間外労働上限の規制のみならず2023年4月から中小企業にて、月60時間を超えた場合の時間外労働は割増賃金が50%かかります。
コスト増加の観点からも、ドライバーの適正な業務管理や時間管理は不可欠な業務の一つとなっています。
3.強靱で持続可能な物流ネットワークの構築
政府は、物流業界の課題への対応策として「強靱で持続可能な物流ネットワークの構築」というビジョンを掲げています。具体的な内容は次の3つです。
- 感染症や大規模災害でも稼働できる強靭な物流ネットワークの構築
- 持続的な成長に資する国際競争力をもつ物流ネットワークの構築
- 持続可能な社会に相応しい物流ネットワークの構築
現在でも十分に整備されている日本の物流ネットワークですが、今後はDX化を推進し、地球環境に配慮した、国際競
争力を持つ物流ネットワークへ生まれ変わるという構想です。
この構想の軸となる物流DXについて、政府は物流分野の機械化とデジタル化の推進を考えています。
物流分野の機械化の例は次のとおりです。
- 自動運行船
- ドローン配送の実現
- 庫内作業の自動化と機械化
物流のデジタル化には、次の改革を目標としています。
- 手続きの電子化
- 点呼や配車管理のデジタル化
- 荷物とトラック・倉庫のマッチングシステムの実現
政府の考える物流DX化による省人化が実現すると、日本の物流業界は大きく変容することでしょう。ドライバー不足をカバーして、高い生産性を上げることも夢ではありません。
しかし、すべての理想がそのまま実現するとは言い切れません。DX化ができるポイントから着実に進めてほしいところです。
物流業界の今後の動向
物流業界はドライバー不足が重大な課題となっており、人手の確保と生産性の向上が必須と言えます。
今後は、高齢ドライバーの退職や2024年問題などの影響により、今の物流業界を支えるためには、より高い生産性が求められるようになるでしょう。
生産性低下の対策として、物流システムやAIなどの生産性向上に寄与するソリューションを積極的に取り入れ、現状の物流インフラを守っていかなければなりません。
また、物流業界は社会の状況や景気に大きく左右されます。新型コロナウイルスの影響下では、宅配分野は需要が急増しましたが、輸送分野は、メーカーが製品の減産を余儀なくされたことで、需要が落ち込んでいます。
物流業界の今後は、拡大傾向にあるEC市場に支えられて、宅配需要は高止まりを続ける一方、輸送分野は、経済の動向によって左右されることが予想されます。
まとめ
物流業界では、労働環境の厳しさと低賃金による働き手不足が大きな課題です。人手不足はすぐに改善できません。まずは、効率化のためのソリューションの導入や、コスト削減を考える必要があります。労働環境が改善され、賃金アップが実現できれば、おのずとドライバー不足は解消されるでしょう。
プロレドパートナーズでは、このような物流業界の変化に対応する荷主企業の皆様の物流改革をご支援しています。まずは貴社の課題の共有から、ぜひ一度ご相談ください。
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