人手不足やカーボンニュートラルへの対応に加え、2024年4月には働き方改革の一環として改善基準告示の改正が適用されます。このまま何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力が不足するといわれています。
2023年6月2日に、荷主企業や物流事業者、一般消費者が協力して国の物流を支えるための環境整備に向け、商慣行の見直し・物流の効率化・荷主や消費者の行動変容をなどの対策を取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」が政府により策定されました。今後の輸送力不足を軽減するために、荷主企業は物流改革に積極的に着手する必要があります。しかし、商慣行の見直しや物流の効率化は、物流部門だけでは解決が難しい課題です。物流部門だけでなく密に連携する部門を含め会社全体での改革を実施する必要があります。そのため、各部門の担当者に任せるのではなく、俯瞰力のある経営層が主体となって実行しなければなりません。
SCM/3PL/物流のお悩みを解決したい方へ
プロレド・パートナーズでは、現状把握から施策の立案・実行まで一貫したサポートが可能となります。SCM改善について皆様からのご相談をお待ちしております。
本記事では、物流改革の成功に必要な進め方を、現状の把握から実行まで詳細に解説します。物流改革に動き出そうと検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
物流改革とは
物流改革とは、倉庫内の生産性や輸送時の積載率の向上といった、部分的な取り組みではなく、物流に関わる諸問題を会社全体や経営レベルで検討・対処することです。具体的には、物流センターの統廃合、納品条件(リードタイムやロット)の変更、物流拠点の自動化など、構造的な問題を解決する際に実行されます。
類似用語に物流改善がありますが、2つは似て非なる意味を持ちます。改善は、現状を維持しながら改良を加えること。一方の改革は、新たな世界を切り開くという意味があります。
改善は現状の問題点や課題を変化修正させる取組みです。改善により大きな効果を得るためには、多くの改善を長期に渡り積上げていくことが必要となります。
改革は全く新しい変化を目指したり、生み出したりします。改善と比較して、変化の規模も大きく、より抜本的な変革となります。
そのため、物流改革は物流部門だけで遂行されるものではありません。調達・製造・販売などの他部門と物流部門が密に連携し、俯瞰的に取り組む必要があります。
物流改革の進め方
物流改革に取り組むための準備を進めてはいるものの、「何から着手すべきか判断できない」「現状や解決すべき問題点を把握できていない」と悩みを抱える企業も多いでしょう。
ここからは、物流改革の進め方を具体的に解説します。
手順は以下の通りです。
- プロジェクト化
- 現状把握
- データ分析
- 代替案の検討
- 効果のシミュレーション
- 実施計画の策定
順番に見ていきましょう。
0.プロジェクト化
まずは、物流課題の解決に向けたプロジェクトを立ち上げましょう。
物流改革といいますが、物流部門だけで実行することはできません。大規模な物流改革をおこなうためには、物流の前後の機能まで含めてメスを入れる必要があります。
そのために、社内の関係部門はもちろんのこと、物流改革に必要な専門家やベンダーなどを社内外問わず集め、課題解決に向けたプロジェクトチームを編成します。同じタイミングで、物流改革のスコープや達成目的、実施期間、予算、リスク管理などを含め、プロジェクトの全体像を策定します。
1.現状把握
プロジェクト化が完了したら、続いて自社の現状を把握します。
物流改革を実行するうえで、現在の問題や解決すべき課題を明確にし、どの程度の物流コストが発生しているかを見える化する必要があります。
物流のプロセスごとに、現状の課題点を洗い出します。この段階では、些細なものから重大な影響を及ぼすものまで制限を設けずに進めることが重要です。
また、課題点のリストアップは、一人だけでなく、必ず複数人で実施します。社内外のステークホルダーから物流に関する意見や要望をヒアリングし、さらに多くの課題点を洗い出しましょう。
2.データ分析
現状把握の工程で認識した問題に関連するデータを収集し、定量化します。
定量化することにより、経営に与える影響が可視化されます。定量化した問題の中で、より大きなものを物流改革の優先ターゲットとして位置づけます。そして、その問題が解決している状態と現状とのギャップを課題として認識します。
3.代替案の検討
解決すべき課題が決定したら、続いて代替案を検討します。
課題が解決されている状態を言語化・数値化しながら可視化していきます。そして、可視化された状態を作り上げるための代替案をゼロベースで検討します。多くの場合現状との乖離が大きいため、現在導入ができていないスキーム、技術やシステムの検討が必要となります。この際、代替案実行の費用やリスクについても可視化してください。
4.効果のシミュレーション
次に、代替案導入時の効果をシミュレーションします。
代替案の導入には、物流会社やシステム・マテハンベンダーの協力が必要となりますので、社外からの提案内容を基にシミュレーションを進めます。
既に、そのようなパートナーが選定されている場合は、パートナーの協力を得ることで、シミュレーションの精度と速度を上げていくことができます。
5.実行計画の策定
シミュレーションによる導入効果やリスクアセスメントが完了したら、選定された代替案の実行計画を策定します。実行を確実なものとするために、十分な期間とリソースを配分し、万が一に備えてバックアッププランも準備しておくことが大切です。
まとめ
物流改革は、物流センターの統廃合や受注ルールの変更など、企業全体や経営に関わる改革を指します。
物流改革といいますが、物流部門だけで実行することはできません。
大規模な物流改革をおこなうためには、物流の前後機能まで含めてメスを入れる必要があります。各部門の担当者ではなく、俯瞰力のある経営層が主体となって取り組むべき課題なのです。
物流改革を検討している企業は、本記事を参考に物流改革への第一歩を踏み出してみてください。
なお、プロジェクトの立ち上げ方が分からない、プロジェクトの進捗がよくないといった問題がある場合は、弊社へご相談ください。
物流プロジェクトのプロフェッショナルが、深い知識を持って現状把握やデータ分析、課題点のリストアップ、シミュレーションまで幅広くサポートします。また、数多くの事例や実績、弊社のデータベースに蓄積された情報から、物流課題を解決へと導くアイデアを提供することも可能です。
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