環境

原子力発電の仕組みとは?メリット・デメリットも簡単に解説

企業が脱炭素の取り組みを進めるにあたっては、エネルギーミックスの最適化は大きなテーマです。

今回は、数ある発電方法の中でも、知っているようで知らない原子力発電について、基本的な仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

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原子力発電の現状と日本政府の方針

原子力発電とは、日本の現状

原子力発電はウラン燃料の核分裂エネルギーを利用して発電する方法で、日本では1966年に初めての商業用原子力発電が運転を開始して以降、50年以上にわたり稼働しています。2011年3月の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所での事故を受けて、一時は、日本全国の原子力発電所は全て稼働を停止しました。

現在は、原子力規制委員会の新規制基準への適合性審査の認可を経て、一部が再稼働しています。

原子力発電は、2021年は日本の発電量の6.9%にあたる708億kWhを発電しています。

出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(速報)(2022年11月22日)

原子力発電に対する日本政府の方針

次に、原子力発電に対する日本政府の方針についてご説明します。

2021年10月に閣議決定した

「第6次エネルギー基本計画」では、「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2050年カーボンニュートラルや2030年度の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」

との記載があります。

同計画の関連資料「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」においては、2030年度の発電電力量・電源構成案として、原子力発電は20~22%(1,880~2,060億kWh)と暫定値が公表されています。

一方、2050年カーボンニュートラルという大きな目標を前に、2022年5月に資源エネルギー庁より公表された

「クリーンエネルギー戦略 中間整理」では、「ウクライナ危機・電力需給ひっ迫を踏まえ、再エネ、原子力などエネルギー安保及び脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用など、エネルギー安定供給確保に万全を期し、その上で脱炭素を加速させるためのエネルギー政策を整理」

との記載があり、エネルギー安定供給確保、脱炭素の推進の効果という観点から、再生エネルギーと並び、原子力発電の最大限の活用について言及されています。

参考:経済産業省「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月22日)
参考:経済産業省「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」(2021年10月22日)
参考:経済産業省 産業技術環境局・資源エネルギー庁「クリーンエネルギー戦略 中間整理」(2022年5月19日)

原子力発電の仕組み

原子力発電の基本的な仕組みは、熱エネルギーで水を沸かし、蒸気でタービンを回して発電を行いますが、この点では火力発電と同様です。

火力発電が化石燃料を燃やして熱エネルギーを得る一方、原子力発電は、ウラン燃料の核分裂により熱エネルギーを発生させます。

ウラン燃料を核分裂させる装置が原子炉で、これは火力発電のボイラーにあたる部分です。

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

原子炉内ではウランの核分裂が連続して発生しており、水や制御棒で核分裂の数をコントロールすることで、一定の出力で運転することができます。

原子炉のタイプ

原子炉はいくつかのタイプがありますが、日本では「軽水炉」と呼ばれるものを主に使用しています。軽水とは、重水素を持つ重水と区別して用いる言葉で、一般的な水のことです。軽水炉とは、核分裂をコントロールする減速材や、核分裂により発生した熱を取り出す冷却剤に軽水を使用する原子炉です。

軽水炉は、さらに構造の違いにより「沸騰水型軽水炉(BWR)」と「加圧水型軽水炉(PWR)」に大別することができます。

また、近年はより安全性を高めた革新原子力技術として、「小型モジュール炉」「高速炉」「高温ガス炉」「溶融塩炉」などの新型炉の研究開発が進んでいます。

原子力発電の燃料、ウランとは

原子力発電に用いるウラン燃料は、核分裂しやすいウラン235(約4%)と核分裂しにくいウラン238(約96%)を混合したもので、ペレットと呼ばれる直径8mm、高さ10mmの円筒状に加工されています。ペレットを被覆管内に集合させたものを燃料棒と呼び、燃料棒をさらに束ねたものが、燃料集合体です。

発電時に使用されるウラン燃料は3~5%のみで、残りの部分はウランおよびプルトニウムとして残ります。

この使用済燃料を再処理することで、再び発電に使用することができるのも、原子力発電の特徴です。

なお、リサイクル燃料にはウランのみが濃縮・再精製された燃料以外に、再処理によって分離されたプルトニウムとウランを混合させた燃料があり、これをMOX燃料と呼びます。

MOX燃料は主に高速増殖炉の燃料に用いられますが、軽水炉用のペレットと同一形状に加工し、軽水炉でウラン燃料の代替として用いることをプルサーマルと呼びます。

原子力発電所の運転年限

原子力発電所の運転年限は、日本では2012年の原子炉等規制法の改正において、原則40年かつ1回に限り20年の延長が可能と定められていましたが、2023年2月に、原則40年、最長60年とする現行の原発の運転期間の規定は、規制委が所管する原子炉等規制法から削除され、再稼働に向けた審査や司法判断などで停止した期間を運転年数から除外し、60年超の運転ができるようにすることが閣議決定されました。

有名な日本の原子力発電

【関西電力株式会社 美浜発電所】

所在地:福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3

原子炉(電気出力・運転開始年月):

  • 1号機(34.0万kW・1970年11月)※2015年4月運転終了、廃止措置中
  • 2号機(50.0万kW・1972年7月)※2015年4月運転終了、廃止措置中
  • 3号機(82.6万kW・1976年12月)/いずれも加圧水型軽水炉(PWR)

美浜発電所は、1970年11月、1号機を日本の加圧水型商業炉として最初に運転を開始しました。 2015年4月に1号機、2号機の運転を終了し、加圧水型原子炉の廃止措置研究に活用されることとしています。

2023年3月25日現在、3号機が稼働しています。

参考:関西電力「事業所・関連施設 美浜発電所」

【関西電力株式会社 高浜発電所】

所在地:福井県大飯郡高浜町田ノ浦1

原子炉(電気出力・運転開始年月):

  • 1号機(82.6万kW・1974年11月)
  • 2号機(82.6万kW・1975年11月)
  • 3号機(87.0万kW・1985年1月)
  • 4号機(87.0万kW・1985年6月)/いずれも加圧水型軽水炉(PWR)

高浜発電所では、2010年12月、3号機でプルサーマルの試運転、翌1月に営業運転を開始しました。東日本大震災後は、2016年1月に3号機がプルサーマル運転で初の再稼働を実施し、翌月、4号機でもプルサーマル運転を開始しています。

また、定期点検のため2011年1月に1号機、同11月に2号機停止しましたが、2016年6月、1号機・2号機について、原子力規制委員会にて運転年限の最長20年間延長が認められました。建設から40年を超す老朽原発で、審査に合格し延長が許可された初の事例となります。2023年3月25日現在、3号機、4号機が稼働しており、1号機、2号機はそれぞれ2023年6月、7月に再稼働予定となっております。

参考:関西電力「事業所・関連施設 高浜発電所」

【九州電力株式会社 玄海原子力発電所】

所在地:佐賀県東松浦郡玄海町今村

原子炉(定格出力・運転開始年月):

  • 1号機(55.9万kW・1975年10月)※2015年4月運転終了、廃止措置中
  • 2号機(55.9万kW・1981年3月)※2019年4月運転終了、廃止措置中
  • 3号機(118.0万kW・1994年3月)
  • 4号機(118.0万kW・1997年7月)/いずれも加圧水型軽水炉(PWR)

玄海発電所は、九州電力で最大の発電所です。

2009年12月に3号機でプルサーマル運転を開始しましたが、2023年11月の定期検査でプルサーマル発電を中断し、すべて通常のウラン燃料に置き換わる見通しとなっています。

2023年3月25日現在、3号機、4号機が稼働しています。

参考:九州電力「玄海原子力発電所>原子力発電所の概要」

【東北電力 女川原子力発電所】

所在地:宮城県牡鹿郡女川町塚浜字前田1

原子炉(定格出力・運転開始年月):

  • 1号機(52.4万kW・1984年6月)※2018年12月運転終了、廃止措置中
  • 2号機(82.5万kW・1995年7月)
  • 3号機(82.5万kW・2002年1月)/いずれも沸騰水型軽水炉(BWR)

女川原子力発電所は、東北電力として最も早い時期に建設された発電所です。2011年3月の東日本大震災時、1号機、3号機は通常運転中、2号機は原子炉起動中の状態でしたが、3基とも冷温停止に成功しました。高台に位置する同発電所は、震災後、約3ヶ月間、地域住民の一時避難所として機能しました。

2023年3月25日現在、1号機は廃炉措置中、2号機、3号機が定期点検中です。

2020年11月、宮城県知事は、女川原子力発電所2号機を対象に、東日本大震災の被災地にある原子力発電所としては初となる、再稼働の地元同意を表明しました。

2023年2月15日の東北電力プレスリリースおよび報道によると、2号機は再稼働に必要な国の許認可をすべて受けており、今後、2024年2月の再稼働に向けて、2023年11月までに安全対策工事の完了に取り組むとしています。

また、3号機の再稼働にあたっては、プルサーマル運転が検討されています。

参考:東北電力「女川原子力発電所>女川原子力発電所の紹介」

上記を含め、日本には2023年3月25日時点で59基の原子力発電所が存在します。運転状況は、運転中9基、定期点検中24基、廃炉措置中20基、廃炉6基です。

参考:原子力規制委員会「原子力発電所の現在の運転状況」

原子力発電のメリット・デメリット 

電力は、安定供給(Energy Security)・環境適合性(Environment)・経済効率性(Economic Efficiency)、そして安全性(Safety)の観点から評価されます。

これは電源構成の判断基準で、「S+3E」と呼称されています。

本項でも、上述の基準を念頭に置きつつ、原子力発電のメリット、デメリットを説明していきます。

原子力発電のメリット

メリット① 燃料供給が安定している

原子力発電の燃料になるウランは、主にオーストラリアやカナダなど、比較的政情の安定した国から輸入されています。

また、ウラン燃料は投入量に対するエネルギー出力が大きいという特徴があり、前述の通り、再処理してリサイクル可能なウランやプルトニウムを取り出すことで、再び燃料として使用することも可能です。

地下資源に恵まれず、一次エネルギー自給率に大きな課題がある日本において、少なくとも1年間は国内保有燃料だけで生産が維持できる準国産エネルギーとして位置付けられています。

メリット② 安定した発電ができる「ベースロード電源」

原子力発電は、外部環境(天候・昼夜)を問わず、安定的に低いコストで電力を作り出すことのできる電源、すなわち「ベースロード電源」のひとつです。

ベースロード電源には、ほかに石炭・地熱・水力などが挙げられます。

電力は基本的に需給がバランスしている必要があります。

発電量をコントロールできるベースロード電源は、太陽光や風力などの自然環境に発電量が左右される再生エネルギーのデメリットを補完する役割を担っています。

メリット③ 発電時にCO2を排出しない「ゼロ・エミッション電源」

原子力発電は前述の通り、発電にはウラン燃料の核分裂のエネルギーを用いており、燃料燃焼をしないため、CO2を排出しない「ゼロ・エミッション電源」です。

発電時の排出量だけでなく、燃料の採掘、発電所の建設、廃棄物の処分などの、設備・運用での排出も含めたライフサイクルCO2排出量においては、原子力発電は19g/1kWhと算出されています。

火力発電に比べ大幅に低く、太陽光・風力などに近い水準です。

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」
   (一財)電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価(2016.7)」

メリット④ 発電コストが低く、燃料価格変動の影響を受けにくい

原子力発電は、コスト面では、リスク管理・廃炉費用を含めた上で運転コストが低く、また、メリット①で述べた燃料供給の安定性から、燃料価格変動の影響を受けにくいという特徴があります。

原子力発電のコストメリットを表す事例として、関西電力が2017年8月に実施した値下げがあります。

これは、関西電力高浜発電所3、4号機が本格運転を再開したことにより、火力燃料費等が削減されたことを反映し、関西電力域内の全ての需要家に平均で4.29%値下げを行ったものです。

電力は、産業においても国民生活においても基礎的なインフラであり、価格弾力性が低い(高いから買わないという選択をしにくい)公共財です。

電源の有用性の評価において、安定的に低コストで供給が可能かどうかは重要な観点です。

参考:関西電力「プレスリリース:電気料金の値下げについて(2017年7月6日)」

原子力発電のデメリット

デメリット① 事故発生時の被害が甚大である

原子力発電で事故が発生し、原子炉から外部に放射性物質が放出された場合、周辺環境が汚染され、重大な健康被害が起こります。

放射能汚染は原状復帰が非常に難しく、除染が長期に渡ることも問題です。

日本は被爆国であり、さらに福島第一原子力発電所での重大事故を受けて、原子力開発には国民世論の抵抗感が大きいのが現状です。

デメリット② 最終廃棄物処分の問題

原子力発電に利用した後のウラン燃料を再処理する過程で、再利用できないものとして残った廃液が「高レベル放射性廃棄物」となります。

高レベル放射性廃棄物は、人体に有害な放射線を発しており、数万年という非常な長期にわたり人間の生活環境から隔離する必要があります。

日本では、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」により、地表から300メートル以上深い地層に処分すると定められています。最終処分に適した地層を調査し、地元自治体の理解を得て最終処分場の建設用地の選定を行いますが、長い期間、将来世代に不安要素を残すことが課題となります。

まとめ

今回は原子力発電の基本的な仕組み、メリット・デメリットについて解説しました。

原子力発電は、事故のリスクおよび最終廃棄物処分といった課題がありつつも、エネルギー自給率の改善、電気料金の抑制、CO2排出量の削減といった点でメリットがあることから、脱炭素のマイルストーンである2030年およびカーボンニュートラルを掲げる2050年の段階においても、一定の役割を担うと想定されます。

脱炭素の取り組みを進めておられる企業の皆様におかれましても、「S+3E」の観点でのメリット・デメリットを踏まえ、調達電力の構成をお考えになってはいかがでしょうか。

プロレド・パートナーズでは、企業の環境経営の取り組みについてもコンサルティングを承ります。脱炭素への取り組みについてご検討の際は、プロレド・パートナーズへお気軽にご相談ください。

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